その③~まじでだらだら続く~
その③~まじでだらだら続く~
そんなわけで(?)、会場内にあった売店でホットドッグとハンバーガーなどで腹を満たし、適当にマジックを楽しんで初日を終える。

すわ、溜まったスタックを解決せねばなるまい。
具体的には、これから宿泊するホテルを探すこと。日本ならばホテルなど決めていなくても、やれマンガ喫茶だ、やれ健康ランドだ、と男一人泊まるところなど心配する必要など全くないが、こと外国となれば話は別。
特に、オランダの夜がどんなものか、気温が寒いだろうということくらいしか情報はない。遠く離れた異国の地、しかも季節はほぼ真夏の夜に凍死などしたくない。痛いニュースなどに掲載されては、まさに末代までの恥。

まだ人がごったがえす会場(※写真1)を抜け出して、ホテル探しへ。
…この時点で、まだ甘い思考が自分の中に残っていたことを痛感する。それは、「仮にも、世界大会が行われるような会場だし、近くは栄えているだろう。つまり、会場周辺をうろつけば、ホテルの一つや二つ、見つかるだろう」というもの。

もちろん、そんなことはなかった。

写真2を見ていただきたい、これは会場を出て、すぐ隣の路上を撮影したものである。まっすぐ伸びるその道路を200メートルほど進み、俺は踵を返した。

こわすぎる!

写真だけだとよくわからないと思うが、ひどく寂れているのだ。
平日の昼間(といっても6時くらいだが、まだ明るかった)とはいえ、人の気配などまるでなく、古びた倉庫に、「これ日本だったらぜってぇ車検通らねえだろ」と思わせる、ホイールの錆付いた路駐車。

不意に、サイボーグ009のジェット団とシャーク団のボス同士がナイフを持ち、ナワバリ争いのための決闘をしているシーンが脳裏をかけめぐる。

いかんいかん、ここは日本を遠く離れた異国の地。争うことを忘れ、当たり前のように日々平和を享受して生きる日本人など、彼らにとってはウサギ同然。草食獣は群れを離れた瞬間、肉食獣の餌食になる運命なのだ…。

などと、わけのわからない妄想に浸りつつ、会場前へと再び戻る。
そう、そんな危険を侵し、こっちにあるのかないのかわからないホテルを探すまでもなく、地元民の力を借りればいいじゃないか!(極力安全なやつ!)

というわけで、タイミングよく会場前に停まっていたタクシーを捕まえる。

「へーい、えくすきゅーずみー、あいはぶのーほてるとぅでい、あいうぉんととぅーるっきんぐふぉーほてるとぅでい!!」

といった按配で、例によって合っているのか間違っているのかよくわからないが、たどたどしく英語で尋ねる。
やはり最初はわからないようだったが、何度も「ノーホテル!」と壊れたCDプレイヤーのように繰り返していると、なんとか通じたらしい。「乗れ」とばかりに助手席のドアを開き、俺が席に着くと共にタクシーは走り出した。そのまま無線でいずかかへと連絡を取り合い、折り合いがついたらしくこちらへ尋ねてくる。
「何泊するつもりだ?」
「えーっと(今日、明日、明後日…)、すりーでいず!」
「オーケー」
また何事か話しつつ、メモを取り、通話を終えた。

「なんちゃらかんちゃら、99ユーロ。オーケー?」

部屋は空いているようだが、一泊99ユーロだよ、いいか?ってことのようだ。もうなんでもいいよ、疲れたし。その後もオーケーオーケー繰り返していると、ようやくホテルへと到着。
「この近くには他にもいくつかホテルがあるが、俺が案内したところが一番いいホテルだぜ!」というようなことを言い残し、タクシーは去っていった。
その後、アムスでは珍しく、若い黒人のあんちゃんが経営していると思われるホテルにチェックインを済ませる(なお、会計は前金だった。また、パスポートのコピーもとられたが、そういうものなのか?)。

ようやく休める、と思ってほっとするが、カードキーの使い方がわからず、今一度黒人のあんちゃんに使用方法を実演してもらい、部屋へ。

ここでやるべきことはすでにいくつか決まっていた。
まず、一つは現金の分割化。
先に述べたとおり、治安の良し悪しが全くわからない海外をほっつき歩く中で、全財産を持ち歩くのは危険極まりなく、一応シングルとして借り切ったホテルに置いたほうが安全だろう。そして、万が一ホテルに空き巣が入り込んだ場合を考慮して、予備として持ってきていたデッキケースの中に、手元に残す200ユーロ以外(日本円含む)を放り込む。

次に、風呂。
汚い話になって申し訳ないが、実は先日の日記にもあったが、木曜日・仕事→終わったら空港、飛行機→そのまま16時間経過してアムステルダム→一日過ぎる。という過密スケジュールだったため、定かではないが、48時間近く風呂に入っていないのだった。
部屋風呂、ならぬ部屋シャワーを浴びる(バスタブは無かった)。
そんなわけで限りなく生ゴミに近い状態でいた俺だったが、シャワーを浴びて気がついたことがある。
ここ、歯ブラシもカミソリもない。かろうじてあるのはボディソープ、シャンプー、石鹸のみ。

タクシーの運ちゃんがいった「ここが一番いいホテル」というセリフを思い出し、ちょっとイラっとするが、すでに3泊分の宿泊代金は支払っており、後の祭りであった。まぁ、オランダのホテルが全体的にアメニティグッズの品揃えが悪いのかもわからんしな。
そして、残るは…、洗濯である。
実は下着類は1日分の予備しか持ってきていない。石鹸を駆使し、パンツと靴下をわしわしと荒い、スーツかけにブラ下げる。

人心地ついたところで、俺はホテルを後にした。オランダの日は長く、辺りはまだ明るかった。
全く見覚えの無い町をふらふらと彷徨い、ある一軒の店に掲げられた看板を目にして自動ドアをくぐる。

「PC PARTS」とどでかく掲げられたその店内は狭かったが、壁際には所狭しと電子部品が陳列していた。もちろん、ノートPCを持参しているわけではないので、それらには興味はない。目当ての品が見つからず、店番をしていた店員に尋ねる。
「あーいむ、るきんふぉー、あいふぉんちゃーじゃー」
「アイフォン、チャージャー?」
あいにく、店番をしていたのは70過ぎているようなじいちゃんであった。
それはともかく、先日の日記にあった「iphoneの充電器」とは、正しくは「日本のiphoneの充電器」なのであった。プラグや電圧が異なるここオランダでは、本当の意味で、ただの荷物だった。こちらでもiphoneによるネットブラウジングが可能であることが判明した今、この異国の地で俺が行きぬくためには、その力を可能な限り使っていくことが望ましい!というわけで、手近な電気屋を回っていたという次第である。
しかし、世界を席巻している(と、俺が勝手に思い込んでいる)iphoneも、これほどまでのじいちゃんのアンテナには届いていないようだった。
サッパリ通じていないので、とりあえず鞄から実物(日本版の充電器)を取り出し、じいちゃんの鼻先に突きつけ、
「ディス!ディス!」
と繰り返す。
なんとか通じたようで、じいちゃんは店のバックヤードに引っ込むと、ビニール袋に包まれたコードのようなものを持ってきた。
その両端には、日本人には馴染みのない、三本口のコンセントと、見慣れたコネクタ。
実際に店先のコンセントを借りて充電可能か試させてもらうと、確かに液晶には充電中を示すグラフィックが表示される。

じいちゃんに例をいい、代金を支払ってホテルへ、散々迷いながらも帰り着く。時間は八時過ぎ。
旅の疲れですぐ眠れそうな気もしたが、さすがにそんなこともなく、目は冴えたままだった。しかもひどく空腹である。
ただ、夜道をうろついても、どこで食事ができるかもわからないとあっては、食事に出る気はしない。
結局、充電器が確保されたのをいいことに、iphoneのyoutubeアプリで「狼と香辛料」を4話ほどたて続けに見て、「やっぱり面白いなあ」とありきたりな感想を抱いた後に就寝。

ようやくオランダ初日終了。

コメント

D
2010年10月12日10:48

キャーダルサーン!

Hanoi
2010年10月12日23:03

電波少年を思い出したw

もっちー
2010年10月15日7:01

想像を遥かに超える行き当たりばったりぶりに目が離せない

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