その④

2010年10月17日 TCG全般
二日目である。
ホテルには時計もなかったため、苦労して時差を計算したおかげで、iphoneからは現地時間の七時にアラームが流れた。

目覚めてすぐ思ったこと、それは「腹減った」であったが、前述のとおり買いだめしていた食料はなく、チェックインの際に「朝飯はいらん(いくら取られるのかよくわからんし)」と伝えてしまったため、ここに留まっていても腹が脹れることはない。
何より、会場までの所要時間が本当に不透明であるため、本日行われるPTQ(なお、現時点では「来年度最初に行われるプロツアーの予選」としか発表されていなかった)出場を見越した起床時間であった。
また、このホテルには灰皿が無いため(このホテル、ホントに何もねぇな!)、予備のデッキケースに水を入れ、灰皿代わりに朝の一服を済ませる。ちなみに、これを伝えたら友達に「この罰当たりが!」と怒られた。

そして、干していた洗濯物を整理して準備完了。ホテルを飛び出す。
アムステルダムの朝は、まだ真っ暗で且つ、寒かった。やはり、今現在の俺のようにTシャツでうろつく気温ではない。

震えながら、昨日同様、薄暗い街中をうろつく。もちろん、徒歩で会場まで行き着こうという無謀な計画を実行しようとしているわけではない。タクシーを捕まえようとしているのだ…が、薄暗さと比例するがごとく、道路にはサッパリ車の往来がない。たまにタクシーを見つけても、日本式「ヘイタクシー(右手を掲げる)」では全然停まらない。いったいどういうことか。オランダ式タクシー駐車術は、何か特殊な儀式でも必要なのだろうか…。
そんなことを考えながらふらふらと彷徨っていると、中央分離帯の一角に、大挙としてタクシーが停まっているではないか。そう、ここオランダでは、タクシーはそこらを突っ走っているものを無理矢理停める物ではなく、タクシーステーションで油を売っている物を捕まえるのであった!
ようやく捕まえたタクシーに、例によってiphoneに表示された会場住所を突きつけ、再びコンベンションファクトリーへ。時は8時ちょうど。ようやく日が昇り始め、辺りを照らし出していた。
 
 そして、会場は、まだ開場していなかった。


早すぎた!へし折れそうな心をなんとか押しとどめ、空いた時間を有効活用すべく周辺をうろつくことにする。

昨日ちょっと散策した会場横の工場地帯は荒廃しすぎていて本当に怖いので、逆方向の線路側へと歩き出す。確か、昨日乗ったタクシーはこっちの方面から来ていて、道中には「アムステルダム中央駅」があったはず。開場時間まで一時間もあるため、とりあえず駅をめざして歩き始まる。道中に飯屋の一軒もあるだろう、という見通しも存在した。
しかし、30分かけて中央駅まで歩いてみたものの、途中にあったSUBWAYも開店時間は九時からと表示されていて、食事がとれる場所はなかった。コンビニも無かった。本当にないない尽くしで、自分はいったいなんなのだろうかと自問自答しながら中央駅から見える水平線を眺める。元来埋立地であるアムステルダムの海は、工業排水のせいか、絶望的に汚かった。というか、なんかカラフルだった。
仕方がないので空腹を抱えたまま、再び会場へ。今度はすでに開いており、まっすぐPTQの参加受付を済ませる。

始まる前に、昨日も食べた食事ブースでハンバーガーでも食べようか、と画策するも、こちらも早すぎるためか、まだ開店していない。

そんなこんなでPTQ開始。M11シールドである。ラスゴ・マイコンを要するなかなか強力なパックをいただき、青白へ。

初戦を勝利で飾り、にやにやしていると、今回のプロツアーに参加している、数少ない知人の一人、デミゴッドくんがやってきた。聞くと、今日は特になにかあるわけではないが、一応会場まで足を運んだそうな。

デミゴッドくんに、サイドイベントとして催されているスタントーナメント(優勝はスタンフォーマットのカード、フルフォイルセット!)へ出場を勧め、念のため持ってきていたキムラーバントをデッキごと貸し出す。ただし、「祝い袋」スリーブは断固として拒否されたので、二人でスリーブを入れ換え、送り出す。

マイキムラーバントを駆り、勝ち続けるデミゴッドくんとは裏腹に、俺は7回戦目でついに二度目の敗北を喫し、息絶える。
 当日の夜中にはミラディンの傷跡プレビューが予定されていたが、まだ5時ぐらいで、プレビュー開始は9時過ぎ…。俺は、それまで会場に居残り続けるのが非常に無駄な気がして、それならばせっかくオランダに来たことだし観光しよう!と思い立ち、再びアムステルダムの街中を歩き出した。
とは言ったものの、当然オランダの下調べなどしているわけもなく、iphoneとにらめっこしながら街中をうろつくことになる。

入念なリサーチの末、オランダの観光名所は、飾り窓地帯(いわゆる売春地帯のようなもの)と、アンネの家、ゴッホミュージアムなどが有名どころのようだと突き止める。しかしまあ、道がわからないので本当に適当に歩く。昨日のように全財産を持ち歩いていないことと、見知らぬ街を徘徊することにも慣れてきたことが相まってか、特に周囲を警戒することも、「怖いからホテルに帰りたい」という擬似ホームシックにもかからずに、リラックスしながら進むことができた。一応、闇雲に類手いるわけではなく、朝にタクシーで来た道を進み、ホテルの方角を目指しているつもりだった。

 そうこうしていると、巨大な城?教会?のようなものが眼前に現れる。
先ほど見た観光名所案内には、確か飾り窓地帯は、旧教会の近くにある、とあったような気がする。つまり、この周辺に飾り窓地帯があるはず、俺ってやっぱ天才じゃーん!と一人寂しく自画自賛しながら、その教会周辺をうろついていると、あからさまにうじゃうじゃと観光客でごったがえしている、川沿いの小道が。案の定飾り窓地帯まで行き着いたようなのである。
人生適当にやってもなんとかなるよね、とか思いながら、噂の代わり窓地帯(red-light-district)を散策してみる。右も左も、老若男女を問わない人の群れ。時間がまだ早いせいか、まだ閉まっている窓も多かったが、その名の通りの赤いイルミネーションに縁取られた窓ガラスの向こうで体をくねらす下着姿のねーちゃんたち。数軒ごとに現れる、ノゾキ部屋、マリファナミュージアム、エロティックミュージアム、大人のおもちゃ屋などのうさんくさい店の数々…。
その道はせいぜい片道数百メートル程度のものだったが、あまりにあけっぴろげに「エロエロエロエロエロエロ!」というエロス光線にやれらてすっかりハイになる。適当にバーに入りビールを引っかけて、とりあえずとばかりにノゾキ部屋に入ってみる。ノゾキ部屋では、金を払うと窓の向こうで裸のねーちゃんがセクシーダンスを踊っているのが一定時間見えて、金が切れるとまた見えなくなる、というシステムだった(1分1ユーロくらい?)。
 ものは試し。とりあえず両替した2ユーロを入れてみると、中のねーちゃんにいきなり「ハロー?ハウドゥユドゥー?」とか話しかけられる。どうやら、金を払った人間の窓は向こうからも見えているようだ。唐突すぎるコンタクトに、もごもごと「アイムファイン」とかなんとか返す。少し時間が経過し、窓がまた見えなくなったの期にノゾキ部屋を後にして、再び飾り窓地帯を散策開始。

飾り窓地帯は、一周するごとに窓の向こうのねーちゃんたちの顔ぶれが変わっているし、脇道にも飾り窓の群れがあるしで、調子に乗って何周も何週もしてしまう。ノゾキ部屋にも三回くらい入る。もちろん入るごとにダンサーのねぇちゃんは変化しており、一回くらいは中でセクロスしているのを見物した。ねーちゃんはピザだったが。

これってクマ吉式無限ループ?いつ終わるともしれないこのループ作業に「無限ループって怖くね?」と心の中にいるもう一人の俺が囁く。

途中、マンガコミック屋さんを発見。中に入ってみると、ワンピ、ブリーチ、ドラゴンボール、金岡、ふしぎ遊技など、日本の有名どころコミックの外国語版(おそらく、ほぼ全て英語版)がずらりと揃っていて、ちょっと感動する。ここで、毎晩エクテンの調整につきあってくれたHanoiへ、感謝の気持ちをこめて、よつばと!の英語版をお土産として購入。

 「せっかくのここまで来たんだから飾り窓ろうぜ…グヘヘ」と心の中のゲッペルさんが囁く、が、いつの間にか金がない。
 今日持ってきた金は200ユーロで、PTQに出たり拡張アート・プレインズウォーカー・ニコルボーラスを買ったりして、手元にある金は残り70ユーロ程度。ホテルまで歩いて帰れるとはとても思えなかったので、飾り窓見学もそろそろ終了することにする。ちなみに、合計で10周くらいした。どこにそんな体力があったのかと、自分でも驚いた。

 帰りのタクシーを探す前に、すぐ近くにあったスーパーへ寄る。そこで、ひげ剃り(三枚刃)、歯磨き粉、歯ブラシ、パン(朝飯用)、マンゴージュース(1リットル)を購入…、
 「42ユーロ」

 えっ

 いくらなんでも高すぎない?病気?一瞬、自分の至らない英語力による幻聴かと疑ったが、

 観光客だと見透かされて、ボッタクリ請求された可能性もあるが、ないとどうにもならんので、仕方なく払う。
本当にぎりぎりとなった懐具合だったが、なんとかホテルへタクシーで帰り着く。あとは、また「狼と香辛料」の続きを見ながらパンをかじり、洗濯もしてから眠る。
続く(次でたぶん終わり)

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索